不動産の世界には「耐用年数」という考え方があり、「物件の築年数が耐用年数を越えているか」「耐用年数が何年残っているか」によって、融資の受けやすさや物件売却時の金額が変わってきます。運や気まぐれではなく、実力で成功を掴むマンション投資家になるために、「耐用年数」を踏まえた投資の考え方を習得しましょう。
この記事では、耐用年数を利用して、物件の買い替えタイミングや狙い目の築年数などを判断するための知識をご紹介します。
1.耐用年数とは
耐用年数とは、簡単にいうと「物件を利用できる期間」のこと。具体的な年数は国税庁によって定められており、本来は減価償却と呼ばれる不動産購入経費の分割処理をするために使われています。
不動産投資における耐用年数のポイントは、「耐用年数=物理的な物件の寿命」ではないことです。投資物件の価格や運用可能年数など、耐用年数の影響を受ける事柄が多いので、どのような影響があるのかを押さえておきましょう。
2.耐用年数が与えるマンション投資への影響
銀行融資の難易度とローン期間が変わる
銀行の審査では、物件の耐用年数が何年残っているか(残存耐用年数)によって、ローンの上限額やローンの期間が変わります。耐用年数がほとんど残っていない物件は、築浅物件に比べて購入後に運用できる期間が短くなります。将来的に入ってくる利益が不安定なので、古い物件は高額なローンや長期のローンを組めません。
月々の減価償却費の額が変わる
不動産投資において、減価償却費はもっとも金額の大きい経費です。おおまかに説明すると、減価償却費とは物件の購入費用を残存耐用年数で割ったもの。経費の額が大きければ、翌年の税金を節約できます。
同じ金額の物件でも、耐用年数が何年残っているかによって減価償却費として処理できる金額が変わってくるため、物件を買うときは築年数にも注目しましょう。
耐用年数を使い切っていると税金の負担が大きくなる
物件を売って利益が出たら、譲渡所得税を納めます。譲渡所得税の計算方法は「課税所得×税率」であり、課税所得は「物件の売却価格-購入費用等」で算出可能です。
ただ、中古物件売却では、物件を運用している間に下がった資産価値、減価償却費を購入費用から差し引く必要があるため、耐用年数の少ない物件ほど経費が減り、利益と税額が増えてしまいます。
3.構造別の耐用年数の目安
国税庁によって決められている法定耐用年数の目安は、以下の通りです。
- 鉄骨造(厚さ3mm以下):19年
- 木造:22年
- 鉄骨造(厚さ3mm~4mm):27年
- 鉄骨造(厚さ4mm~):34年
- 鉄筋コンクリート造(RC造):47年
- 建物設備(エレベーター等の付属設備):15年
新築マンションの場合、上記の基準をそのまま適用します。
ただ、中古マンションは経年劣化ぶんを差し引くために、別途耐用年数の計算が必要です。
4.中古マンションの耐用年数の計算シミュレーション
築年数が法定耐用年数をオーバーしている場合
築25年の木造や築50年のRC造など、法定耐用年数を越えた中古マンションの残存耐用年数は、
- 法定耐用年数×20%
という式で求めます。上記の例を実際に計算してみると、以下の通りです。
- 木造:22年×20%=4年
- RC造:47年×20%=9年
- 建物設備:15年×20%=3年
※小数点以下切り捨て
築年数がまだ法定耐用年数に達していない場合
まだ、法定耐用年数を迎えていない物件の残存耐用年数を求める計算式は、
- (法定耐用年数-築年数)+築年数×20%
というもの。
たとえば、築15年のRC造マンションなら、
- (47年-15年)+15年×20%=32年+3年=35年
となります。法定耐用年数は建物の寿命ではありません。残存耐用年数が10年でも、メンテナンス次第で12年・15年と運用できる物件が多いため、シンプルに「法定耐用年数47年-築年数15年=32年」と計算するよりも、長く償却できるようになっています。
5.運用方針に応じた構造の選択を
ある程度、大きな額を狙って不動産投資を進める場合は、耐用年数の長い物件を選んだ方が有利です。不動産は、木造やRC造といった建物の基礎構造によって耐用年数が変わります。残存耐用年数の少ない物件や構造上耐用年数の短い物件は、長期間運用できません。
投資初心者があれこれ手を出しても、失敗のリスクが増えるだけです。自分好みの運用方針を決め、安定した収益を確保するまでは、価格が落ち着いてきた築浅のRC造やSRC造の物件に投資しましょう。
6.まとめ
不動産投資では、耐用年数によって組めるローンの期間が変わったり、収益物件として運用できる時間の長さが変わったりします。耐用年数そのものは税務の知識ですが、理解しておくと根拠を持った物件選びができるようになるので、ぜひ理解しておきましょう。成功している不動産投資家の多くは、独自の運用方針を確立していることが多いです。
今回の記事を通して耐用年数の理解を深め、自分に合った不動産投資の運用方針を決めましょう。