主に分譲マンションなどの区分所有の建物で、大規模な修繕工事に備えて月々積み立てられる「修繕積立金」。マンション経営をする場合には、この修繕積立金の価格決定や積み立て方も重要なポイントの一つです。
そこで今回は、修繕積立金と管理費の違いや相場と適正価格、積み立て方の種類などについて解説します。修繕積立金について住民が滞納や反発をした場合についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
修繕積立金とは
修繕積立金は、大規模修繕工事などの特別な維持・管理・修繕に備えて積み立てられるものです。具体的には、下記のような内容に使うための費用です。
- 定期的な大規模修繕に関する費用
- 突発的な事故など不測の事態や特別な理由に起因する修繕に関する費用
- 区分所有者全体に関わる利益のための特別な費用(外壁や屋根の改装、バリアフリー工事、給排水管の交換など)
修繕積立金は「管理費」とは異なる
修繕積立金と混同されがちなものに「管理費」があります。
管理費は、日々の保守点検などの一般的な維持・管理・修繕に使われるものです。具体的には、管理委託費、共用部分の光熱費、電球のような消耗品、植栽や駐車場の管理費などに充てられます。
このように修繕積立金と管理費は全く異なるものなので、会計上もきっちりと分けて計上すべきです。修繕積立金を管理費の一部として使うことはできないので注意してください。
修繕積立金の費用相場と適正価格
実際に修繕積立金をどのくらいの金額にするかを決めるにあたっては、国土交通省が発表しているガイドラインを参考にするのがおすすめです。
各住戸の修繕積立金の額は、一般的に長期修繕計画で算出されたマンション全体の修繕積立金の額をもとに専有面積あたりの額を設定し、そこに各住戸の専有面積をかけて計算します。
ガイドラインには適正価格についても定められており、専有面積あたりの修繕積立金の額は以下のように掲載されています。
- 15階建て未満の場合
建築延床面積5,000平米未満:218円
建築延床面積5,000~10,000平米未満:202円
建築延床面積10,000平米以上:178円 - 20階建て以上の場合:206円
15階建て~19階建てについては定められていませんが、15階建て未満と20階建て以上の間に収まるものと考えられています。
また、ガイドラインによると、修繕積立金の平均値は平成30年度のデータで1戸あたり月額11,243円でした。建物の規模や1戸あたりの専有面積によっても異なりますが、こちらも一つの目安としてみてください。
修繕積立金の積み立て方
修繕積立金の積み立て方には、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介しますので、物件に合った積み立て方を検討してください。
均等積立方式とは
20~30年後までに見込まれる大規模修繕などの費用の累計額を算出し、それをもとに月々の支払金額が一定となるよう割り出す積み立て方を均等積立方式といいます。
築年数が経過して修繕費が増加しても、もともとその増加分を考慮した定額を設定しているため、住民側の負担額が安定しているのがメリットです。
ただし、突発的に大きな故障が発生した場合には長期修繕計画に修正が生じ、増額しなければならない可能性もあることは念頭に置いておきましょう。
段階増額積立方式とは
均等積立方式とは逆に、そのタイミングごとの修繕の必要性に合わせて積立金を増額していく積み立て方を段階増額積立方式といいます。
建築後間もないうちは積立額を抑えられるのがメリットですが、もともと計画していた増額であっても各住戸の住民の同意を得られず、トラブルになってしまうことがあります。もし計画通り増額ができないと、積立金の不足により修繕が行えないこともあるため注意が必要です。
修繕積立金は安く設定した方がいい?
月々の費用が安い方が入居率が上がると考え、修繕積立金を安く設定しようとする方もいますが、安易な考えで金額を下げるのは危険な行為といえます。
しっかりと長期修繕計画を見据えて月々の積立額を設定しないと、大規模修繕が必要となった際に修繕費が足りなくなる可能性があります。また、その不足を補おうと無理な増額をすることで住民とのトラブルを巻き起こしてしまうことも考えられます。
目先の入居率などにとらわれず、必要な額を見据えて適正な価格を設定しましょう。
修繕積立金に対して住民が滞納や反発をしたときの対処法
修繕積立金についてのトラブルといえば、まず住民が積立金を滞納してしまうことが考えられます。
そのような場合、何度か電話などで催促をし、払う意志がないようであれば督促状、さらに悪質な場合は裁判所に申し立てるなどの法的手段をとらなければならないケースもあります。管理会社に管理を委託している場合は、管理会社を通したほうがスムーズに対応できる可能性が高いです。
もし住民側に事情があり、払う意志はあって事前に相談された場合などは、トラブル防止のためにも期限延長や分割払いに応じることも考慮しましょう。
次に、積立金の金額や増額について住民が反発するというトラブルも起きがちです。まずは反発が起きづらいよう、適正な価格に設定することを心掛けましょう。
それでも反発が起きた場合は、じっくりと話し合うことが重要です。修繕積立金の必要性や、どのような計算に基づいて設定された金額なのかを説明すると、理解してもらえることもあります。
まとめ
マンション経営を長期的な目線で見ると、避けては通れない大規模修繕。費用面で備えるには、修繕積立金が必要不可欠です。
住民側としても少ない負担ではなく、トラブルのもととなりやすいポイントでもあります。しっかりと長期修繕計画を立て、適正な修繕ができるよう、また住民にとっても適正な価格となるよう準備しましょう。