不動産投資には空室や滞納、周辺の賃貸需要変化など、さまざまなリスクへの備えが必要です。その中でも、不動産投資のかなめともいえる現物資産・収益物件そのものが損傷したり損壊したりする「災害リスク」への備えは欠かせません。
こちらでは事前に対策を練っておくことで、災害リスクを最小限に抑える方法について学んでいきましょう。
目次
不動産投資の災害リスクとは
不動産投資における災害リスクのうち、特に注意すべきものは次の3つです。
- 地震
- 火災
- 水害
これらの災害が起こると建物が損傷したり損壊したりするリスクに加え、中に住んでいる人がケガをしたり、建物が傷んだことによって退去者が出て空室率が上がったり、水害による浸水で躯体(建物を支える構造部分)が腐食したりする可能性が出てきます。
建物が損傷すれば多額の修繕費が必要になりますし、退去者が出ると収支計画が崩れ、毎月の返済額が捻出できなくなってキャッシュフローがマイナスになってしまうかもしれません。これを避けるためには、次のような対策を事前に練っておくことが大切になります。
災害リスクの備え①物件選びにハザードマップを利用する
まず、購入を検討している物件はすべてハザードマップで災害リスクを確認しましょう。
国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」を開くと、地点ごとの災害リスクが確認できる「重ねるハザードマップ」や、各市町村が作成したハザードマップを閲覧できる「わがまちハザードマップ」にアクセスできます。
サイト上で洪水(想定最大規模)、土砂災害、高潮(想定最大規模)、津波(想定最大規模)などのリスクが確認できます。「色がついていない土地であれば絶対に安全」とは言い切れませんが、一定のリスク軽減にはなります。
近年ではゲリラ豪雨による災害も増えているので、標高が高い土地でも浸水リスクをチェックすることが大切です。
災害リスクの備え②新耐震基準を満たす物件を買う
次に確認すべき点が、築年数です。少なくとも1981年6月1日に施行された「新耐震基準」に則った建物を選びましょう。それまでの旧耐震基準が震度5程度までを想定しているのに対し、新耐震基準なら震度7程度の地震に耐えられる構造となっています。
建築確認申請が6月以降なので、完成までの日数があるため1981年9~10月以降に完成した建物あたりが境目になるといわれています。その翌年に完成した建物でも、旧耐震基準に則っているものがあるので注意しましょう。売主に依頼し、建築確認申請が受理された日付を確認すると安心です。
建築基準法上の耐震基準は、大きな災害が起こるたびに過去何度も見直されてきました。そのため、基本的に新しい建物ほど新しい基準に則った丈夫な構造だと考えられます。
災害リスクの備え③耐震補強工事をする
築年数が経過していて耐震強度に不安がある場合は、耐震補強工事をするという手もあります。ただ、費用負担がかなり高額になるので慎重に検討しなければなりません。築年数が新しい別の物件を購入したほうが、結果的に初期投資の回収が早くなる可能性もあります。
戸建て住宅やアパートの場合は耐震補強工事が可能ですが、区分マンションの区分所有だと耐震補強工事自体ができません。
災害リスクの備え④火災保険・地震保険に加入する
保険への加入は、基本的な対策となります。ハザードマップでリスクが指摘されていない場所でも、できれば火災保険と地震保険の両方に加入しておきましょう。
火災保険でカバーできる範囲は思いのほか広く、次のようなリスクに対応できます。保険会社や保険の種類によって補償の範囲が変わってきて、近年では補償内容を自分で組み立てられるプランなども登場しています。
落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災、水濡れ、水災、盗難、車両の飛び込み など |
地震による被害は、火災保険の補償対象となりません。たとえ火事であっても、地震が原因で起こったものの場合は補償の対象外となります。
地震保険は火災保険に付帯する形で契約できる保険で、単体では加入できません。すでに火災保険のみ加入している人は、あとから地震保険をセットすることも可能です。
まとめ
不動産投資における災害リスクに対しては、このような備えが考えられます。リスクを抑えて収益を確保していくためには、災害に関する事前の調査や対策が欠かせません。
幸い現在では、国が運営するサイトで確かなハザードマップを誰でも簡単に閲覧できるようになりました。必ず購入前に確認しておきましょう。
収支計画を立てるうえで利回りの良い物件を選ぶことは大切ですが、地震や火災で建物自体が損壊すれば、それまでのキャッシュフローが一度に吹き取んでしまう可能性もあります。リスクの低い物件を選び保険で備えておけば、効率的な災害リスクへの備えが可能になります。