投資用マンションの中には、築年数が経過したり瑕疵があったりするため、格安で売り出されている物件もあります。例えばまれに、区分マンションが1室100万円以下で売り出されていることもあります。しかしそうした格安マンションが安いには理由があるため、注意が必要です。
「安いから」と安易に飛びつくのではなく、きちんとリスクを理解したうえで検討し、購入の可否を判断しましょう。
東京周辺エリアのマンションの平均価格
マンションの平均価格の推移は、地価の変動とほぼ連動しています。国土交通省が毎年発表している基準地価(都道府県地価調査)によると、住宅地の全国平均が下落し続けているのに対し、東京圏、大阪圏の住宅地の地価は上昇が続いていましたが、7年ぶりに下落に転じました。
これは、新型コロナウイルスの影響拡大を受けて、先行き不透明感から需要が弱まったことが大きな要因だとみられています。マンションの価格も似たような値動きをしています。
マンションの価格は、当然専有面積によって大きく違ってきます。しかも平米あたりの単価には、築年数や設備の良し悪しなどの仕様などの条件が影響するため、単純に違う物件の価格を比較することはできません。しかし、これらの平均値がマンションの価格を判断するうえで目安にはなります。
平均価格に比べて極端に価格が低い場合や、周辺価格の類似物件に比べて極端に安い場合は、いわゆる「格安物件」になります。
格安マンションが“格安”の理由
では、格安マンションが「格安」である具体的な理由を見ていきましょう。
極端に安い物件は、単に築年数が経過していたり賃貸需要があまり見込めないエリアであったりするほか、「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「法的瑕疵」の4つのいずれかに当てはまるケースがあります。いわゆる「訳アリ物件」です。
物理的瑕疵とは
対象となる建物や土地そのものに、重大な破損や欠陥がある物件のことです。
たとえば、原因部が特定できず、修理が難しい雨漏りや水漏れ、躯体(建物の構造部分)の劣化、シロアリ被害、アスベストの使用、給排水管の詰まりなどの設備の故障、耐震性能不足など、物理的瑕疵の種類は千差万別です。
土地の瑕疵もあります。たとえば、地盤が沈下していたり、地下に埋められた有害物質が発見されて土壌汚染が発覚していたり、土地の境界があいまいであったりするケースなどです。
心理的瑕疵とは
心理的瑕疵物件は、機能や性能に問題がないものの、住む人が抵抗を覚えたり「住みたくない」と考えたりするような要素がある物件です。たとえば、過去に自殺や事故死、孤独死、殺人事件などが起こった物件を指し、「事故物件」と呼ぶことがあります。
また、反社会的勢力の事務所が近くにあったり、構成員が同じ建物内に住んでいたり、近くに心霊スポットなどの嫌悪感を覚えるような施設がある場合も、心理的瑕疵物件にあたることがあります。
ただ、何が嫌だと感じるかというのは人それぞれですから、はっきりと「ここから先が心理的瑕疵物件」といえるような基準は存在しません。該当する事案があるか不安な場合は、「大島てる」などの情報サイトなどを利用して該当物件の事故情報を調べておきましょう。
環境的瑕疵とは
環境的瑕疵物件も心理的瑕疵物件と同様に、機能的・性能的な欠陥はありません。ただ、周辺環境に嫌悪感を覚える要因がある場合に環境的瑕疵物件とよばれることがあります。
たとえば、墓地に隣接していたり、周辺に反社会的勢力の事務所があったりする場合も環境的瑕疵物件に分類され、心理的瑕疵物件との境界があいまいです。また、周辺施設からの臭いや騒音、振動、迷惑行為(騒音やゴミ屋敷など)がある場合も、環境的瑕疵物件に分類されます。
法的瑕疵とは
法的瑕疵とは、たとえば建築基準法や消防法、都市計画法などの法律に抵触している物件を指します。
建築基準法の場合、構造上の安全基準を満たしていなかったり、接道義務を果たしていなかったり、容積率や建ぺい率がオーバーしていたりする物件です。消防法の場合、火災報知器やスプリンクラー、防火扉、避難はしごなどの設置義務を果たしていないケースなどが該当します。
こうした違法建築には建築許可が下りないため、新築物件では基本的に法的瑕疵物件はありません。しかし、ある程度築年数が経過した中古物件の場合、法律の施行前に建てられたために、結果的に違法状態になってしまった物件が存在します。「再建築不可物件」などです。
築年数が経過している物件を購入する場合、所在する地方自治体の担当窓口に問い合わせて法的瑕疵の有無を確認しましょう。
瑕疵のあるマンションを購入するリスク
ご紹介したような瑕疵のある物件を購入すると、次のようなリスクが考えられます。
物理的瑕疵のリスク
たとえば、建物の構造に問題があったり、シロアリ被害が出ていたり、設備が故障していたりする物件では多額の修繕費が必要になるかもしれません。
心理的瑕疵のリスク
心理的瑕疵物件は入居者に告知する義務があります。しかも敬遠されがちなので、周辺の平均賃料が取れないことも多く、収益性に問題が出がちです。
環境的瑕疵のリスク
環境的瑕疵物件も心理的瑕疵物件と同様に、入居者に敬遠されがちです。空室リスクの要因となります。
法的瑕疵のリスク
各種法律に違反している物件の場合、再建築ができないという問題があります。古くなってきたときにはリノベーションで対応することになりますし、相続関係が複雑な場合などは対応が困難な場合もあるので、瑕疵の有無はしっかりと確認しましょう。
リフォームでマンション価値が復活することも
たとえば、物理的瑕疵の場合は、リフォーム工事で問題が改善し、マンション瑕疵が復活することもよくあります。特に、水回りの状態は物件価値に直結するので、早めにリフォームを手掛けましょう。
また、法的瑕疵なども少し法律を調べればクリアになるケースがあります。解決可能な問題であればお得に物件を手に入れるチャンスかもしれませんので、まずは下調べに力を入れましょう。
格安マンション選びで重要なポイント
マンションは大きい買い物なので、少しでも安く手に入れたい!と思うのは当然のことです。初期投資を抑えれば収益化が早まるので、そこは妥協せず本来の物件価値よりも安い物件を探しましょう。
しかし、相場に比べて格安の物件を検討する場合は、安い理由やデメリットを吟味した上で購入することをおすすめします。収益化までの筋道をきちんと思い描いた上で、購入に踏み切りましょう。