マンション経営をすると給与とは別の収入が発生するので、サラリーマンの方も確定申告をしなければなりません。その際、ぜひ利用していただきたい申告方式が青色申告です。
簿記に縁がない人には少し難しく感じられるかもしれませんが、手間に見合った大きなメリットのある制度です。本格的にマンション投資をするなら、ぜひ青色申告を活用しましょう。
青色申告制度とは
青色申告制度とは、一定の条件を満たした会計記帳を行い、その記帳を元に正しく申告している人が一定の優遇措置を受けられる制度です。適正な記帳や、帳簿等関連資料の保存、申告、納税を促すという目的もあります。
この申告に用いる様式の色味が薄い青色であることから、こう名付けられました。青色申告の様式には「青色申告決算書」のページがあり、それ以外の白色申告の様式には代わりに「収支内訳書」のページがあります。
青色申告によるメリットを受けるには、事前に税務署に対して「青色申告承認申請書」の提出が必要です。この申請書は原則として、適用を受ける年の3月15日までに提出しなければなりません。例外として、年の途中で新たに事業を開始した人は、その事業開始日から2ヵ月以内に提出すれば優遇措置の適用が受けられます。
白色申告との違い
白色申告の記帳は、帳簿が1種類しかない単式簿記です。現金取引でも掛け取引でも、さらに売り上げだけでなく仕入れや経費に関しても、同じ帳簿に日付順に取引を記載していきます。
それに対し、青色申告は「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」など、複数の帳簿を使用して取引を仕分けしていきます。ただ、近年では使いやすい記帳ソフトが次々と発売されているため、簿記の詳しい知識がなくても比較的記帳しやすい環境が整ってきました。
青色申告で受けられるメリット
青色申告の届け出をして複式簿記によるルールに則った記帳を行えば、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。また、すべての取引を複式簿記で記録できなくても、現金出納帳や買掛帳などの簡易帳簿を使ってお金の出入りを記録していれば、最大10万円の青色申告特別控除が受けられます。
簡易帳簿による申告でも、30万円未満の減価償却資産の特例(一定の要件を満たせば10万円超30万円未満の資産を全額経費かできる制度)や、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」、黒字の翌年に使える「損失の繰戻」、損失の繰越控除などの青色申告の特典が利用できます。
マンション投資で青色申告が必要なケース
マンション投資による不動産所得では、青色申告のメリットが受けられるかどうかの基準が決められています。「事業規模」を満たしていないと、たとえ青色申告をしても10万円の特別控除しか受けられません。
青色申告は黒字の場合だけでなく、赤字の場合を含めてメリットが大きいので、下記の事業規模に当てはまる人はぜひ青色申告をしましょう。
運用不動産の種類 |
事業規模の目安 |
貸家(一戸建て住宅) |
5軒以上 |
アパート |
10室以上 |
駐車場 |
50台以上 |
法律上マンション投資による不動産所得に関しては、白色申告も可能です。「65万円の特別控除が必要なほど利益が出ていないし、記帳が複雑になると面倒だから白色のままで良いや」と、切り替えない人も少なくありません。
しかし、投資開始当初は他の所得(給与所得など)と損益通算するために帳簿上の収支を赤字にしていても、いずれは利益が出てくるはずです。その前にぜひ、青色申告の届け出をして青色申告に切り替えましょう。
青色申告の特典には赤字の年にも使えるものがあります。早目に青色申告に切り替えることが大切です。
マンション投資で青色申告をする節税メリット
マンション投資で青色申告をする最大のメリットは、65万円の青色申告特別控除が利用できるという点です。この特別控除は税金からではなく所得から直接差し引かれるので、所得税額はもちろん住民税額にも影響します。
所得額は下記の表に則って計算されます。全体の所得額によっては、この65万円で税率が変わってくることも。所得が多い人ほど影響が大きいといえるでしょう。
課税所得額 |
控除額 |
所得税率 |
計算式 |
1,000円超 194万9,000円未満 |
0円 |
5% |
課税所得額×0.05 |
195万円超 329万9,000円未満 |
9万7,500円 |
10% |
課税所得額×0.1-9万7,500円 |
330万円超 694万9,000円未満 |
42万7,500円 |
20% |
課税所得額×0.2-42万7,500円 |
695万円超 899万9,000円未満 |
63万6,000円 |
23% |
課税所得額×0.23-63万6,000円 |
900万円超 1,799万9,000円未満 |
153万6,000円 |
33% |
課税所得額×0.33-153万6,000円 |
1,800万円超 3,999万9,000円未満 |
279万6,000円 |
40% |
課税所得額×0.4-279万6,000円 |
4,000万円超 |
479万6,000円 |
45% |
課税所得額×0.45-479万6,000円 |
損失の繰越控除や繰戻控除によっても、税額が変わってきます。
節税メリットが少ない場合もある
記帳を頑張って青色申告をしても、事業規模に満たない場合は65万円の青色申告特別控除が利用できません。また、事業規模に達している場合も、複式簿記でなく簡易簿記を行っていては10万円の特別控除しか受けられなくなります。
法人化すれば計上できる経費が増えるのでおすすめ
さらなる節税を考えるなら、法人化という手もあります。法人化すれば約7万円の住民税均等割り額が発生しますが、所得が増えた場合の税率が抑えられます。
給与所得と合わせて課税所得が年間900万円を超える場合は、所有権の移転などの手間や費用が発生するので、最初から法人化しておきましょう。法人化に適したタイミングは個人の状況で大きく変わるので、事前のシミュレーションをお勧めします。
まとめ
マンション投資で所得を得るなら、いずれの場合でも青色申告をおすすめします。
慣れるまでは少し難しく感じられるかもしれませんが、しっかりと得点を活用して節税し、収益を確保しましょう。