マンション投資・経営をするなら知っておきたい「損益分岐点」の考え方

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マンション投資・経営をするなら知っておきたい「損益分岐点」の考え方

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マンション投資や経営をする上で、必ず知っておくべき考え方に「損益分岐点」があります。文字通り、損と得を分ける分岐点です。

マンション投資では初期投資が大きくなり、ランニングコストもかかります。そのような出費をどう回収し、いかに利益を出していくかということを考えていきましょう。

損益分岐点とは、利益も損失も発生せずプラスマイナスゼロになる値を指す言葉です。主に事業経営や投資の世界で使われます。

事業経営や投資では、設備購入などの初期投資が発生します。さらにランニングコストもかかり続け、それらを継続して得られる収益の中から払い続けなければなりません。

収益の累計額が、初期投資とその時点までのランニングコストの合計額に追いつく時点を「損益分岐点」と呼びます。つまり、事業経営や投資では損益分岐点以上となることが前提であり、それ以上が実際の利益となるわけです。

マンション投資・経営の場合は、入居率の面から損益分岐点を考えます。税引き前のキャッシュフロー(現金の出入り)上の損益分岐点は、次の計算式で得られます。

入居率の損益分岐点=(年間運営費+年間返済額)÷ 入居率100%時の家賃収入

運営費には、管理会社への管理委託料や設備の修繕費、入居者入れ替えに伴う原状復帰費、ローン返済の利息など、さまざまなものが含まれます。年間返済額は、不動産ローンの返済額です。

たとえば、次のような条件の物件では66.7%が損益分岐点となります。

年間運営費 100万円
年間返済額 300万円
入居率100%時の家賃収入 600万円
(100万円+300万円)÷600万円=66.7%

つまり、入居率が67%より高ければキャッシュフロー上では黒字が出ます。10室あった場合、3部屋までの空室なら耐えられるということです。

入居率100%時の家賃収入は、建物が古くなるにしたがって下がっていきます。それを加味して算出しましょう。

不動産・マンション投資では、年間の所得に対して所得税が課されます。不動産所得の算出時には、物件に減価償却が適用され、建物や設備の費用の減価償却費が経費として計上可能です。

建物の法定耐用年数はRC造(鉄筋コンクリート造)のマンションで47年、木造で22年と定められています。中古物件の場合は、次のような計算式で取得時の耐用年数を算出し、それをもとに減価償却費を算出します。計算結果が2年未満であれば、2年間です。

取得時の耐用年数=(新築時の耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

たとえば、築30年のマンションであれば、残りの耐用年数は「(47‐30)+30×0.2=23年」です。

償却期間中は実際の経費が発生していなくても経費が計上できるので、利益幅が抑えられ、キャッシュフロー(現金の出入り)上の手残りが出しやすくなります。損益分岐点の計算では、必ず減価償却費やその影響による所得税の金額を計算に入れましょう。

さらに「損益通算による所得税の還付、住民税の減税」なども活用する場合は、それらも計算に入れると正確性が増します。

ご紹介した損益分岐点は、単年ごとにキャッシュフローが確保できる入居率を考えるためのものです。これとは別に、投資期間全体を通したトータルとしての損益分岐点があります。

マンション・不動産投資で利益が出たかどうかの最終判断は、売却時になるまでできません。所有期間中に累積した利益プラス売却益の合計が、初期投資や運営費の合計額を上回れば利益が出たわけで、その投資は成功といえます。

所有期間が長いほど(入居者がいれば)利益が蓄積できるので、トータルとしての損益分岐点をクリアしやすくなります。物件価格以上の金額が蓄積できれば、それ以降は売却額がいくらあっても損はしません。そのため、利益を確保する上では長期所有が有利です。

ただし、年間運営額を下回るほど家賃収入が下がってきたり、大きな修繕費が必要になったりした物件は手放した方が良い場合もあります。管理状態を改善したり、管理会社を客付けに強いところに変えたりすることで改善するケースもありますが、物件を手放す時期は慎重に見極めましょう。

マンション・不動産投資においては、損益分岐点という視点が非常に重要です。入居率100%を前提に収益を計算していたために、利益が確保できず焦る人も少なくありません。

融資の返済期間が長ければ年間返済額が抑えられるので、入居率の損益分岐点が下げられます。余裕を持って運営できるよう返済期間はできるだけ長く設定し、現金を手元に蓄積していきましょう。運営実績と返済実績が銀行からの信用に繋がり、次の融資を受けて規模を拡大する際の足がかりとなります。