「クーリングオフ」は重要な契約や申し込みについて、契約者を保護するための制度です。一般的な商取引については「特定商取引法」によって、販売形態ごとに何日間かのクーリングオフ期間が定められています。取引の内容によっては、クーリングオフの対象となりません。
実はマンション投資も、クーリングオフの対象となる契約です。どういった条件ならクーリングオフが適用されるのか、クーリングオフするための手続きはどのような流れなのかをご紹介していきます。
マンション投資もクーリングオフの対象
マンション投資は投資用物件の売買契約を伴うので、ケースによってはクーリングオフの対象となることが、「宅建業法(宅地建物取引業法)第37条の2(第1項)」によって定められています。
これによると、一定の条件を満たす宅地や建物の売買契約について、その会社の事務所など以外の場所で契約を締結した場合、書面による申し込みの撤回や契約の解除ができるとされています。
契約解除の条件となる「その会社の事務所など以外の場所」とは、自宅や勤務先、喫茶店などを指します。つまり生活の場に押しかけて営業をかけ、冷静な判断ができない状況に追い込んで契約を締結させた可能性もあるので、契約解除が可能というわけです。
よくあるマンション投資のトラブル
マンション投資会社の中には、投資用マンションに関してしつこい営業をかけ、自宅や勤務先に押しかけて契約を迫る業者もいます。そうした業者の多くは投資用マンションのメリットばかりを強調し、投資のリスクやデメリットについては説明しません。
こうした業者の多くは、「本日中に契約すれば割引になる」などと契約を急かします。契約しないとなかなか帰ってくれないので、冷静な判断ができずつい契約してしまうというトラブルがよくあります。
一般的に契約を急かす業者は、あまり信用できません。こうしたケースはクーリングオフの対象となる可能性があります。
クーリングオフが適用される条件
それでは、詳しいクーリングオフの適用条件を見ていきましょう。「宅建業法 第37条の2(第1項)」の条文によると、クーリングオフの適用には次の4つの条件が定められています。
1.宅建業者が売主であること
2.事務所や関連する建物以外で契約を締結したこと
3.クーリングオフの説明を受けていれば、契約から8日以内であること
※説明を受けていなければ、それ以上経っていても契約解除可能
4.売買契約の対象となる物件の引渡しや売買代金の支払いが済んでいないこと
これらの条件を満たしている場合に契約の撤回を希望するなら、書面にて申し込みの撤回や売買契約の解除を申し出ましょう。
宅建業者が売主であること
クーリングオフが適用される契約は、売主が宅建業者で買主がそうでない場合だけです。宅建業者でなければ個人に限らず、株式会社などの法人も対象となります。
事務所や関連する建物以外で契約を締結したこと
宅建業者の事務所や、それに準ずる専任の宅地建物取引士を置くべき場所で締結された契約の場合、買主が自ら望んでそこを訪れて適正な営業行為が行われたと判断されるため、クーリングオフが適用されません。
喫茶店や自宅、勤務先などの場所では冷静な判断ができにくいということから、クーリングオフが適用されます。ただし、買主の希望に応じてその場での申込や契約締結が決まった場合は、安定的な購入意思があると判断されるのでクーリングオフが適用されません。
勧誘電話などで宅建業者が訪問を希望し、それに応じた場合は、やはりクーリングオフの適用対象となります。
クーリングオフの説明を受けていれば、契約から8日以内であること
クーリングオフは適用可能な期間は、契約から8日間です。ただしクーリングオフが可能である旨を説明していない場合、期間の定めなく契約解除が可能です。
なお8日間が経過したあとでも、民法や消費者契約法に基づく申し込みの撤回や契約の解除は可能な場合があります。
売買契約の対象となる物件の引渡しや売買代金の支払いが済んでいないこと
売買契約の対象となる物件の引渡しが終わっており、残りの代金の支払いが済んでいる場合は、履行関係が終了しているのでクーリングオフが適用されません。
マンション投資のクーリングオフ手続きの流れ
実際にクーリングオフを利用する場合は、クーリングオフの説明を受けて8日以内に、「内容証明郵便」で契約先不動産会社にクーリングオフしたい旨を通知します。
内容証明郵便とは、「誰が誰宛に、いつ、どのような内容の手紙を送ったか」を郵便局が第三者の視点で証明してくれる手紙です。たとえ本人が受け取りを拒否したとしても、手紙を出したという事実が残ります。
内容証明郵便には行数や文字数といった書式の明確なルールがあるので、それに則って書きましょう。
信頼できる不動産会社選びを
投資家としっかりと向き合い、不動産の運営で利益を出す姿勢のある誠実な業者は押し売りまがいのことはしません。「詐欺だったかもしれない」と思うようなマンション投資の契約をしてしまったら、速やかにクーリングオフしましょう。
不動産投資は、しっかりとしたノウハウや知識をもとに取り組めば比較的安定した利益を出せる投資法です。投資用物件の購入は、業界に精通した信頼のおける不動産会社に依頼しましょう。