原油を始めとした各種資源の高騰や巨大市場である米国経済の動向、ウクライナ危機といったさまざまな要因によって、長年超低金利政策を貫いてきた日本でも金利が上昇してきています。
ここで気になるのが、金利上昇が不動産投資に与える影響です。
今回の記事では、金利上昇が不動産投資家にとって良いことなのか悪いことなのか、また金利上昇中はどういった点に注意して投資をすれば良いのかを解説します。
目次
金利上昇でローンの返済額は増えてしまう
不動産投資に金利上昇が与える最も大きな影響は、ローンの返済額が増えてしまうことです。
不動産投資物件を購入する際にローンを組むと、元金だけでなく金利も返済することになります。大雑把な計算ではありますが、たとえば20年ローンで1,500万円を借り入れた場合、金利2.5%が2.6%に上がるだけで月々の返済額はプラス1,000円、総返済額だと約18万円も増加するのです。
月々1,000円程度なら大した問題はないと感じるかもしれませんが、18万円はワンルームなら2~3ヵ月分の家賃に相当します。「金利が0.1%上昇すると、2~3ヵ月間、空室が続いて家賃が入ってこない状態になる」と考えれば、金利上昇がいかに不動産投資へ大きな影響を与えるのかイメージしやすいでしょう。
金利上昇で物件価格が高くなり新たな投資がしづらくなる
金利上昇による間接的な影響の一つが、不動産投資物件価格の高騰です。一般的に、金利上昇は景気が良くなってインフレが進むと発生します。不動産は景気の影響を短期間では受けづらい商品ですが、景気が良くなるとマイホームや投資物件を求める層が増えるので、需要と供給のバランスで不動産価格自体が値上がりする可能性もあるわけです。
インフレになると給与もアップしていくとはいえ、誰もが物価の上昇に釣り合うほどすぐに給与アップするわけではありません。数年前は2,000万円で購入できた物件が2,200万円になっていれば、当然元々の予算や頭金だと不動産投資物件に手が出ないという方も増えてくるでしょう。
さらに問題なのが、コロナ禍後に起きた物価の高騰は、景気が良くなった結果発生したものではなく、資源の高騰などで致し方なく上がったものであるということです。
物価の上昇分は運輸コストや原材料費のコストアップによるもので、商品やサービスを提供する企業の利益が増えているわけではないため、「物価は高くなり物価の上昇に合わせて金利上昇もするが、給与はそれほど伸びない」という状態になっています。
金利上昇が続いて不動産投資物件が高くなり、一方で給与はなかなか上がらないという状況が長引くと、不動産投資に参入したり新たに物件を買い足したりするチャンスは減ってしまうでしょう。
金利上昇で景気が良くなれば家賃を値上げできる場合も
不動産投資物件の家賃は、基本的に地域の相場と照らし合わせて妥当な金額に落ち着きます。
地域全体の景気が良くなったり地価が高騰したりすれば、同じ物件でも家賃は高くなりますし、逆に地域全体の景気が落ち込むと家賃も値下げする必要が出てくるわけです。
世界がコロナ禍から脱して金利上昇に見合った景気の回復を見せた場合、全体的に景気が良くなって家賃を値上げできる可能性があります。
不動産価格の上昇は売却益のアップにもつながる
金利上昇によって不動産価格が高くなると、不動産投資物件を手放したときの利益が大きくなるのもポイントです。
もともとある程度、資産価値の高い物件であれば、価格高騰のタイミングで売却することでまとまった額の現金を確保できます。
十分な資金があればより条件の良い物件に投資する際の頭金にできるので、十分に稼働できていない物件を持っている場合は売却を検討しても良いでしょう。
早目の対策がポイント!金利上昇時の対処法
金利上昇による不動産投資の悪影響は、大雑把にいうとローンの返済負担と投資物件購入時の負担増加です。
この内、不動産価格が高くなることに関しては、頭金を貯める等の方法で対処できます。コストの高騰による金利上昇だと、そもそも不動産価格が上がらない場合も多いです。
ただし、給与が増えるかどうかに関わらず、金利上昇すると必ずローンの返済負担は重くなります。変動金利で不動産投資物件のローンを組んでいる場合は、金利が安い間に固定金利に変更する、返済時に利子の負担がない繰り上げ返済を使って返済期間を短縮するといった方法で、金利上昇分の負担を抑えましょう。
まとめ
不動産投資において、金利上昇はローンの返済負担が増えて物件価格も上昇する一方、不動産の売却益を確保しやすくなったり家賃を値上げするチャンスになったりもします。
金利上昇による返済総額の増加には注意深く対処する必要はありますが、基本的には稼げる物件に投資することが何よりも重要です。
「金利上昇」というたった一つのトピックに注目して投資の判断をするのではなく、市場に出回っている物件の利回りや用意できる頭金、生活の余裕等を計算しながら不動産投資の準備を進めましょう。