ESG投資は、利益の大きさだけで投資先を決めるのではなく、環境や社会にとって良いものに投資しようという考え方のことです。
きれいごとをいっているように感じるかもしれませんが、世界におけるESG投資の運用額は2020年時点で35兆ドル越え、中長期的な資産運用総額の約36%を占めるという、新たな投資のトレンドといって良い状況になっています。
今回は、ESG投資とは何なのか、不動産投資とどういった関係があるのかを、初心者向けの解説で押さえていきましょう。
目次
ESG投資とは環境・社会・ガバナンスを重視した投資
ESG投資とは、
- Environment(環境)
- Social(社会)
- Governance(ガバナンス)
を重視する投資の方法です。
従来の投資は、株であれ不動産であれ、「投資額に対してどれだけ儲かるか」を考えて投資先を決めるのが一般的でした。
しかし、利益のみを重視する企業や資産に投資が集中すると、「環境を破壊していても利益が出ていれば良い」「社会的に良くない手法でも利益が出ていれば良い」といった方向に進んでしまう可能性があります。
そこで注目されたのが、「環境に配慮しているか」「社会にとって良いものか」「サービスや商品を提供している企業のガバナンスは適切か」といった非財務的な指標で投資先を決めるESG投資なのです。
一見、投資家にはメリットがないように見えるかもしれませんが、ESG投資の基準に合致する企業や資産は、省エネに対する意識が高かったり、社会の役に立つ商品やサービスを生み出したりしているため、短期間で倒産・衰退するリスクが低いという強みを持っています。
良い企業・サービスが増えて市場規模が拡大し、社会全体が暮らしやすくなると長期間利益を確保できるようになるため、ESG投資が広がっているのです。
ESG投資にはさまざまな手法がある
ESG投資の手法は、大きく七つに分類されます。
- ネガティブスクリーニング:非倫理的な企業・サービスを避ける
- ポジティブスクリーニング:同じ業界内でもESGの評価が高いところを選ぶ
- 規範に基づくスクリーニング:国際的なESGの基準を満たしていたら投資する
- ESGインテグレーション型:利益・資産とESG基準の両方を評価して将来性のあるものへ投資する
- サステナビリティテーマ投資型:再生可能エネルギーなど持続可能性の高い産業等に投資する
- インパクト投資型:環境や社会に良いインパクトを与えられる企業へ投資する
- エンゲージメント・議決権行使型:株主総会等で意見を出し既存企業のESG評価を高めていく
世界的には、ネガティブスクリーニングや複数の投資手法を組み合わせたファンド型の投資が多く、日本ではESGインテグレーション型やエンゲージメント・議決権行使型が多いです。
ESGによる不動産投資は世界の潮流
ESG投資と不動産投資には、密接な関係があります。なぜなら、不動産の状態や運用の仕方によって、地域環境にも影響が出てしまうからです。
地域に管理不足でボロボロの不動産があったり、居住性が低いせいで空室が目立つ不動産があったりすると、人の出入りが減って環境が悪化し、最終的に不動産の資産価値も落ちてしまいます。こういった状況を避けるため、不動産投資家もESGを考慮して投資した方が良い、という考えが投資の世界で広がりつつあるのです。
日本のESG不動産投資は世界に比べて遅れている
日本のESG不動産投資は、世界に比べると十分に普及しているとはいえません。
2021年のアンケート調査によると、日本国内のESG投資金額は514兆円を越えていますが、ESG不動産投資の運用残高でいうと割合は全体のわずか2.15%です。※1
ただし、国土交通省がESG投資やESG不動産投資の勉強会・検討会を開催するなど、ESG不動産投資自体は政府によって後押しされ、年々市場が拡大しています。
日本のESG不動産投資のポイントはグリーンリース
グリーンリースとは、「導入すると不動産が長持ちするし環境にも優しく、不動産の利用者も快適に過ごせる」不動産の使い方や省エネ設備の導入を、不動産オーナーと入居者が協力して進めていこうと決める契約のことです。
LED照明や節水トイレの設置にこまめな節電、定期的な掃除など、どちらか一方の負担だとやりたくない作業の負担をオフィスビルのオーナーと入居者で分担すれば、不動産の管理不足による資産価値の下落を避けられますし、オフィスも快適性も上がります。ESG投資は、グリーンリースを利用しているかどうかが一つのポイントになるのです。
まとめ
投資の世界では、短期的な利益よりも環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資が新たなトレンドとなっています。
残念なことに、国内のESG不動産投資に限っていえば、まだまだ普及が進んでいるとはいえません。
しかし、政府の後押しもあり、投資市場は毎年のように規模を拡大しています。
成長市場は、大きな利益を掴むチャンスです。
ESG投資は、投資の安定性向上にもつながる手法なので、不動産投資に興味があるならESG投資の動向も押さえておきましょう。