マンション投資は、10年20年と長い時間をかけて利益や資産を大きくしていく資産形成です。そのため、マンション投資の失敗リスクを下げるためには、投資を始める前に「どの物件に投資すれば良いのか」「利用するローンの内容や金利に問題はないのか」を吟味する必要があります。
そんなマンション投資の判断基準の一つとして利用されているのが、イールドギャップという指標です。この記事では、マンション投資におけるイールドギャップの意味や数値の目安など、イールドギャップを投資に活かすための正しい考え方をお伝えします。
目次
マンション投資のイールドギャップとは?
イールドギャップとは、投資によって得られる年間の利回りとローン金利にどれだけの差があるのかを示した数値です。たとえば、年間の利回り3%を期待できる不動産に投資するとき、ローンの金利が1.6%なら、イールドギャップは「3%-1.6%=1.4%」となります。
不動産投資では、とにかく利回りの良い物件に投資すれば良いと考えられることも多いですが、どれだけ利回りが良くてもローン金利が高すぎると出ていくお金が増えるので利益になりません。好ましいとされるイールドギャップの目安は、1.5%から2%以上です。マンション投資をする際は、イールドギャップがマイナスにならないように注意しましょう。
イールドギャップの具体的な考え方
イールドギャップは、「マンションの利回り-ローン金利」で計算できます。
ただ、ここで注意して欲しいのが、計算に利用する利回りの中身です。マンション投資の利回りには、表面利回りと実質利回りがあり、表面利回りは「1年間満室でマンションを運用できた場合、投資した金額の何%儲かるのか」を求めたもの。マンション投資物件の維持費や空室率等を考慮していない理論上の最大利回りなので、表面利回りでイールドギャップを計算すると、実際よりも良い数値が出てしまいます。そして、多くの不動産広告に掲載されているのは、表面利回りです。広告の利回りだけを見てイールドギャップを計算すると、実は老朽化で修繕にお金のかかる物件等を掴んでしまうといった可能性もあるため、イールドギャップの計算では実質利回りを利用しましょう。
マンション投資物件のイールドギャップをシミュレーションする
マンション投資物件のイールドギャップは、
- 年間の家賃収入を求める
- 年間の家賃から維持費等を差し引く
- 実質的な投資の利益をマンション価格で割り、実質利回りを求める
- 実質利回りからローン金利を引く
という流れで計算します。
- 1,800万円のワンルームマンション
- 家賃は月8万円
- 月々の維持費3万円
- 年の20%は空室が出ると仮定
- 不動産投資ローンの金利1.6%
という条件なら、
- 年間の家賃:8万円×12ヶ月×0.8=76.8万円
- 実質利益:76.8万円-3万円×12ヶ月=40.8万円
- 実質利回り:40.8万円÷1,800万円×100=2.27%
- イールドギャップ:2.27%-1.6%=0.67%
イールドギャップは0.67%です。
イールドギャップの注意点について
マンション投資にイールドギャップを用いる際の注意点は、「イールドギャップが良い=投資すべき物件である」とは限らないことです。
イールドギャップは、利回りとローン金利を比較して「利回りの低すぎる投資になっていないか」をチェックする指標に過ぎません。イールドギャップが良くても、賃貸物件としてのニーズが少ないと空室が続いて儲からないため、イールドギャップはあくまでも投資のバランスを判断する指標の一つとして利用しましょう。
イールドギャップの正しい解釈とは?
イールドギャップをより正確に求める場合、ローン金利の代わりに「ローン定数K(K%)」とよばれる値を利用します。ローン定数Kとは、借りたお金を年間何%ずつ返済するのかを数値化したもので、「年間のローン返済額÷ローン残高」という式で計算可能です。
実質利回りからただローン金利を差し引く方法は、たとえば1,800万円を年利1.6%の20年払いで借りるケースと年利2.2%の15年払いで借りるケース、どちらの方が利益をより大きく取れるのかの判断ができません。しかし、「実質利回り-ローン定数K」という式でイールドギャップを求めれば、返済期間の違いによる負担まで考慮して投資額と利回りのバランスを考えられるようになります。
まとめ
イールドギャップは、「マンション投資の利回りとローン金利のバランスが崩れていないか」を判断できる指標です。
ただ、表面利回りと実質利回りの違いや、イールドギャップがあくまでも一つの物差しでしかないことを理解していないと、表面利回りを使ってイールドギャップを高く見せるような、営業マンのセールストークに流されかねません。
イールドギャップを投資で活用するためには、正しい知識と正しい考え方が必要不可欠です。実質利回りを求めたりローン定数Kを使ったりして、より信頼性の高い数値を自分で計算し、イールドギャップを自分の投資に役立てましょう。